世界から集めたうつくしいお茶や茶器のほか、オリジナルの有機フレーバーティーを全国のカフェやショップに届ける青森の「コノハト茶葉店」。

「フレーバーティーは難しくはない。ハーブの場合、ポイントは味と香りです」

店主の三宅貴男さんは、そう軽やかに語る。

三宅さんの手がけた商品はなぜ多くの人に愛されるのか。前編に続いて、お茶を届けるうえで大切にする“お茶の哲学”を聞いた。

》インタビュー前編:音楽レーベルのバイヤーが世界のお茶をセレクトしたら…青森の茶葉店は「お茶の時間」を拡張する

世界から集めた「うつくしいお茶」たち

本州最北の地、青森へ。

JR青森駅から車で約10分ほど走ると、コノハト茶葉店が佇む。ガラス張りの扉を開くと、中国茶、台湾茶、紅茶、日本茶、ハーブティーが、茶器とともに店内を彩る。同じ空間にはコーヒー豆やドリッパーなども一緒に馴染んでいる。

中国公式茶藝師の資格を持つ三宅さんが、おすすめのお茶をふるまってくれる。

台湾の有機農法で作られた「高山 金萱(きんせん)茶」は、湯を入れた時からまるでミルクのような甘い香りが広がる。欧米では「ミルキー・ウーロン」とも呼ばれ親しまれている。

世の中には、バニラの香料を加えた茶葉も出回るが、コノハト茶葉店のものはオーガニックな茶葉らしい優しい香りのお茶が特徴だ。3000メートル級の高山が連なる台湾中央山脈の山腹にある高山茶園と契約しているという。

器のなかで茶葉が広がっていく様を見つめるひとときは、心もゆらぐ豊かなお茶の時間だ。

続いて、高級白茶の産地、中国・福建省の福鼎のオーガニック農園で作られた「白牡丹」。

うぶ毛が残る新芽の姿からその名がついたとされ、カラダの余分な熱を取る作用がある。福鼎大白と福鼎大毫という品種でつくられた白茶は、甘く雑味のない優しい風味が印象的だ。

白茶の製茶は極めてシンプルで、工程に「揉み」がなく、大まかに摘んだ葉をしおらせる工程「萎凋(いちょう)」と「乾燥」でできあがる。茶葉の善し悪しが、そのままカップに反映される茶でもある。

淡い水色と、まろやかで繊細な甘さが心とカラダをほぐしてくれた。

オリジナルのハーブティーが愛される理由

コノハト茶葉店では、世界から集めた厳選茶葉だけでなく、オリジナルブレンドのハーブティーなども販売している。

ブライダルギフト・ティー「something blue(サムシング・ブルー)」など、誰かのお茶の時間に思いをめぐらす、工夫を凝らしたギフトアイテムも並ぶ。お気に入りの雑貨を選ぶように、自分に合った茶葉を見つける楽しさがある。

なかでも、「に、お茶。」シリーズは、自分がなりたい気分や体調に合わせて選べる5種類のオーガニック・ハーブティーバッグだ。全国の小売店にも卸しているという。

“こうなりたい自分「に、お茶。」”というコンセプトで、三宅さんがデザインから手がけたシリーズ。バイオマス素材のティーバッグにこだわった地球に優しいプロダクトになっている。

三宅さんは、「体調に合わせたハーブティーをつくりたかった」と開発をふり返る。

「ハーブティーは飲みにくいイメージがあったので、最初からブレンドにしようと決めていました。もともと自分がおいしいと思ったブレンドを、5種類ほど売っていたんですよ」

現代のライフスタイルを考えれば、「リーフよりティーバッグ」だと感じた三宅さんは、ティーバッグを開発。「会社に持っていくなら1個ずつがいい」と個包装のパッケージにした。 

当初のネーミングは、「リカバリー」や「ウェイクアップ」だったが、「に、お茶。」シリーズでは、「上げたい気分」「保ちたい美肌」「眠りたい夜」「癒したいカラダ」「高めたい集中力」と、なりたい自分をより具体的に思い描けるように工夫した。

7個入りや10個入りで販売していたティーバッグを個包装にすることは、ビジネス的にはチャレンジでもあった。結果的には、選ぶ楽しさが生まれ、複数買いする人が多いという。

「中身が見えるパッケージで、5種類あって色が違うと『買うか買わないか』ではなく『どれを選ぶか』から始まるんですよね。1個だけ買う人はほとんどいなくて、いくつか買っていきます。リピートされる方は、自分で試した後に大切な人へのギフトとしても選ばれますね」

女性に支持される1番の人気商品

ふと、コノハト茶葉店で一番人気のお茶を尋ねてみた。

すると三宅さんは「じつは、これなんです。健康茶」と、「薔薇人参烏龍茶」を教えてくれた。ほとんどの客がリピートする人気商品だという。

「このお茶は、嗜好品ではなくてその人にとって必要なものなんですよね。飲んで効果を感じて『これじゃなきゃダメ』って。まさしく薬のように飲んでいるイメージです。だいたい10日くらいで効果を実感されるから、10個入りにしています」

もともとは、台湾の茶屋から紹介された有機栽培の人参烏龍茶がベースになっている。それに薔薇を加えたのは三宅さんのアイデアだ。

「女性からいろんなカラダの話を聞くようになって、これは女性ホルモンだと思って、薔薇を入れたんです。アジアでもヨーロッパでも親しまれていて、薔薇の色を見るのも気分が上がりますし、薔薇の香りは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を促すといわれています」

「正直にいうと、健康茶はあんまり好きじゃなかったんです」と三宅さんは本音を明かす。

商品にするつもりはなかったが、ワークショップや講座に来てくれた人にサンプルとして渡してみると、「あのお茶が欲しい」という声が続々と寄せられたのだという。

薔薇人参烏龍茶は、「すごく不思議なことがあるお茶です」と、三宅さんはつぶやく。

「お客さま個人の感想ですが、冷えとかむくみとか、更年期の不調が緩和されたと聞きます。効果効能には個人差がありますが、エアコンで体調を崩す方も多いので、暑い夏でもすごく売れるんですよ」

飲みやすく華やかな健康茶は、女性の日常を支えるパワーチャージのお茶だった。

ブレンドティーの開発で大切なこと

世界中の茶を集め、様々な切り口でオリジナル・ブレンドティーを開発する三宅さんだが、「日本茶のブレンドはしない」という。茶師に敬意を払っているからだ。

では、どんなことを大事にして、オリジナルティーの開発を進めているのだろうか。

「ハーブの場合、ブレンドのポイントは味と香りです」と、三宅さんは端的に表現する。

「フレーバー自体は難しくはない。僕の場合は、フレーバーであってもブレンドであっても、基本的にはすごくいいお茶を使う。基準をどこに置くかといえば、『間違いなく品質のいいお茶です』といえるかどうか」

「うつくしいお茶」とは何か

コノハト茶葉店は、ホームページに「世界中から うつくしいお茶だけ 集めました」と掲げている。「うつくしいお茶」の意味するものは何なのか。

すると三宅さんは、「僕の中では、『うつくしいお茶』というのは、『正しいお茶』なんです」と話した。

「例えば、このお茶は美味しいか美味しくないか、の話になると、好みの話になってしまうんですね。好き嫌いで決めるものだ、と。たしかに美味しい・美味しくないは主観なので、それを基準にはできない。だから、正しいか正しくないかを考える癖があるんです」

「もし、目の前のお茶に酸化臭がしたら、それは保管の問題かもしれない。茶葉をしおれさせる工程の萎凋(いちょう)の問題か、お茶の発酵を止める工程の殺青(さっせい)の不足か。それが工程の最後に現れます。茶殻のダメージの出方を見て、分かることもあります」

「正しいお茶」かどうかを判断するために、三宅さんは茶畑や工場、そして輸送、保管のあり方に至るまで、茶の生産プロセス全般に目を向ける。

「お湯の温度は的確か、器はこのお茶に合っているのか。それを辿っていくと、うちで正しく保管できていたか。ちゃんと空輸されているのか。工場では、正しい工程できれいに作られているか」

「もっと辿ると、海外にある製茶工場の空間はちゃんとしているのか。畑はきれいになっているのか。子どもが安価で搾取されるような仕事をしていないか」

その正しさを確認するために、三宅さんは海外の茶畑や工場に足を運ぶ。

三宅さんは、個人差が生じるお茶の淹れ方には大きなこだわりはない。あくまで、お茶が手元に届くまでのプロセスに注目する。

「お茶自体は、コンテナで持ってくればいいし、ネットで商談もできるし、サンプルも送ってもらえます。でも全部が正しくないと、うつくしいとは言えない」

「美味しいか美味しくないかは漠然としてしまうし、いくらでも言いようができる。届ける側だからこそ、自分の中で正しいラインを持っておかないと、品質の保証は保てないですから」

「うつくしいは強い言葉」と三宅さんは語る。

「正しい形で作られて、正しい形で流通して、正しい形で保管されて、正しい形で販売されているか。そして、正しい形でお届けして飲んでいただきたい。それが僕の中のうつくしいお茶」

うつくしいは、正しい。その言葉に、三宅さんのお茶の哲学が全て詰まっていた。

(写真:川しまゆうこ)

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  • 著者:
    笹川ねこ
    『DIG THE TEA』メディアディレクター。編集者、ことばで未来をつくるひと。元ハフポスト日本版副編集長。本づくりから、海外ニュースメディアの記者まで。企業やプロジェクトのコミュニケーション支援も。岐阜生まれ、猫好き。
  • 編集:
    川崎 絵美
濁流のように去りゆくこの時間を、心が溶けるひとときに。